今年のゴールデンウィークに[a moment]という展覧会を開いてくれた絵画教室Nagahama art labo。
この展覧会をきっかけに芸術関連でまた長浜で活躍するプレイヤーとの繋がりができ、早速この8月に『水辺の小さな芸術祭“ひらひら”』という共同プロジェクトを行います。
今回は、ひらひら展を一緒に考えてくれたナガハマアートラボの代表・松野智樹さんにお会いしに行ってきました。
ナガハマアートラボ(以下:アートラボ)は、長浜駅からは徒歩5分ほどのところ、朝日町というエリアにあります。
今年で5年目を迎えるアートラボ。こちらの古民家に絵画教室を移転されたのは今から3年前のことだそうです。
玄関の引き戸がおしゃれな立派な古民家です。早速中へお邪魔しましょう!
こんにちは!
今日はどうぞよろしくお願いします!
芸術が好きな人が集まって、制作が出来て、興味を持った人が来たときに何かのきっかけになれるような、そういうコミュニティのプラットフォームがほしいと思って。
興味があっても何からして良いか分からん人がほとんどなので。最初のきっかけにもなれる場所として絵画教室が一番適切かなってことで、絵画教室になりました。
教室にしちゃうと、松野さん自身の制作時間が減るのでは??
生徒と一緒に作ってます。
松野さんが主に描かれるのは『油彩』ですか?
いろいろですね。油彩もするし、このギターも最新作。
え!ギター??こ、これは・・・
『コラージュ』という技法で、好きな雑誌の切り抜きとかを切り貼りして、その上に絵の具をだーっと塗ってならして・・・ほんでネックの部分はその形に切って・・・
え?!ギターがキャンバス・・・じゃなくって、ギターそのもの作ったんですか??
業者におおまかな形のものがあるのよ。そこから、好きな形に切り出して、弦を張ったり配線の半田付けしたりは自分でやりました。
ボディ部分だけやと思ってた。音は・・・?
もちろんでます★いいでしょ~。
あらゆるものがキャンバスなんですね。
そうなんです。何に描いても良いんですよ。ギターのコラージュはいつかやろうと思ってて。
岐阜から子どもさんと一緒に教室に来てるお父さんがいるんですけど、『おれも何か作れない?』ってことで、そのお父さんギター弾かはる人やったから、『じゃあ一緒ギターつくります?』って言ったんです。
先に僕が作って、今お父さんは白地に塗るところまでできてはるんですよ。
すごい・・・。わたしのイメージしている絵画教室って、こういった制作をしているイメージじゃなかったです。もっとこう・・・受験用のデッサンバリバリ描いてる人がたくさんいるのを想像してました。
そうですよね。(笑)そう、古典的な絵画だけじゃなくって。もっと現代アート寄りというか、やりたいと思ったらなんでもしますよ。
現在アートラボに通う生徒は全員で90名。
そのうちの7割以上が中学生から未就学の子たち。高校生から一般の方も20名程来られている。
開業当初は今よりもっと生徒数も少なかったそうですが、通っている方々の口コミでみるみる人数が増え、
今ではこの大人数を松野さんがひとりで教えられています。
未経験の方もいらっしゃる?
いますよ。ほぼそうです。
そういう方は、描きたいイメージがある方が来られる場合が多いと思うんですが、そうするとみんなばらばらじゃないですか?
そう、ばらばら。自由度が高すぎて。(笑) 何から手を着けようってならないように、もう少し手助けができるカリキュラムに作り直そうと思っているところです。
絵画教室の授業って基本分けていくと、趣味、受験、成長期〜幼少期の教育・・・
という感じなんですけど
中学生までは、ものづくりを通して、新しい価値観や想像力発想力を得られるように、教育として人間的にも自立していく段階をサポートしつつ進めてます。なので、野外にも出来るだけ連れ出して、開放感ある制作も行います。
高校生には、将来像をぼんやりイメージして貰いつつ、制作物を完成させる責任というのがプラスされます。
一般の方は、日常の中に非日常の体験を組み込む事で得られる豊かさであったり、自分を表現する手段としての絵であったり、目的を作る事がまず大事にしています。
何にせよ、基本、絵を描くだけって事は少ないですね。
例えば、小学生クラスはみんな一緒に今回はコレを作ってみましょうって感じでお題を決めて取り組んでます。画用紙に絵を描く事もあれば、グループワークでパズル制作。今回の企画に出す作品用にTシャツをシルクスクリーンで作ることもあります。
受験のクラスもあるんですが、そもそも僕は受験の試験内容そのものがもう古いと思ってる派で。これからは、きっとテクニック面はもっと抑えられて、別の面を見れるようになっていくかなぁと思うんです。
表現の仕方とか発想とかってことですか?
そうですね。・・・そもそも僕は大学に受かることよりも、もっとその先『生き残れる子』であって欲しいと思っていて。
こういうアトリエに通うことは、本格的に学び始める最初の段階なわけで。そこで大学の入試傾向とか対策がどうとかばかりになるのはつまらないなと。なんで、受験が目的でもあれこれやらせます。
10代なんて価値観広げ放題ですから。いろんなことを知っていったほうが良い。
本人に描き続けられる力がついて、モチベーションをどう持続させるか。この先『どうなりたいか』を描けることが大事な部分ですよね。
みんな一緒だと描けても、1人になった途端描けなくなることもある。結局は『自分で生き方を作っていかなあかん』を教えられてない状態で社会に出ても、何していいかわからなくなってしまう。大学卒業後、僕もそうやったからね。
ただ学校は、友達とかみんなで影響を与え合いながら作品の精度を高め合うという点では大切な意味のある空間ではあったと思うし、人との交流も大事だった。
そういう影響を与え合う場所が大学という形以外にも、社会に制作が出来る『集合場所』がもっとあれば良いのになと思う。
現代的な「ネットを介して」ではなく、アナログに面と向かって接しながら、人と人の間にものづくりがある場所があれば。少しは社会との接点についても考えやすい、かもしれん。 それなら、おれ出来るかもってなって。
なるほど!そういう思いがきっかけだったんですね。頭で考えるだけでなく、アナログな作業ができる場所って大事だと思います。
ただプラットフォームに関して言えば、ちゃんと価値を感じてもらうため、認識や知識を一般の人にもっと持って貰えるように行動をしないと、結局商売にならない=お金を得る手段がない。プラットフォームが全然できていかない、作っても無くなってしまう。
だからちゃんと行動して理解を得て、作家は自分の作品や物事に価値観を付随することができて、金銭のやりとりも含めて、社会的に回っていけるようにしていかないといけない。
ここでは、自分の手でものづくりをする体験を通して、そういった理解は進むと思うし、人が生み出す価値についても考えるようになるんじゃないかなと。そんな流れがもっと土台としてどんどん出来てほしい。
うんうん。(深くうなずく)
・・・といろいろ考えているものの、所詮は僕ひとりの力でできる範囲は限られてる。
でも、僕がこんな風に考えているように、同じようなことを思っている人や僕以上にこのことについて考えてる人が、きっとたくさんいる。自分がそういう思いで動いていたら、いつか共感できる人に出会えるかもしれない。
あと5年か10年かどれだけ掛かるかはわからないけれど、結果として必ず何か起こるはず。
行動に移せる人がどんどん増えていったらすごく面白くなっていきそうですね。
そうですね。ぼくも実際どうなっていくかわからないし。
ないない!そんなん特にない。いまさらない。(笑)僕の手をもう離れてしまっているので。
どんな場所かはそこに居る人次第で決まると思うので、もうここは僕ひとりの影響でどうこうとかそういう次元じゃない。だからまぁ、勝手に決まっていきますよね。
みんないい人ばかりなのでありがたいです。これ自慢です!
ちいさな企画の種をここまで膨らませてくださってありがとうございます!
『水路のある町並みってやっぱり良いよね』って感じてもらえるようなプロジェクトができたらなと思っていたところから、たくさんの手作りTシャツを水上でなびかせるにまで広がるなんて、感激です・・・
「あ、これなんかできそうやな」って思ってる人ってたくさんいるやろうし、それを実現させていく動きがどんどん起こっていけば面白いですよね。
他を経由することでまた新しいアイディアがでてきたりもするやろうし、相手にも自分にとっても刺激になるようなプラスアルファが足されていく方が絶対良い。
シルクスクリーンって柄も自分でデザインできるんですか?
できます。いろんな焼き付け方法があるんですが、太陽光で露光させて版を作る方法があって。版から全部自分で作る方が、ものづくりの感覚を味わえてきっと楽しいと思うんです。
自分で作った作品が実際に日常で使えるって良いですね。自然光で焼付け、楽しそう。 今回の水辺のちいさな芸術祭“ひらひら”、どんなかたちになれば良いなと思いますか?
今回の展示は芸術作品として最初から観れる人は少ないかもしれないですね。
Tシャツを媒体にするってことは、たぶんそこに先入観もうまれちゃうからね。アート作品っていうより、少し違和感があるなっていう感覚じゃないかなと。
そんな身近にあるものがどう飾られてるか、何が描かれているかで一気に非日常に変わっていく面白さを楽しんでもらえたら…
誰でも知ってるTシャツだからこそ、接しやすい作品だし楽しみようが絶対あるはず。
そういう意味でも出来るだけたくさんの人が見てくれたら良いなと思います。
今回はお話ありがとうございました! 素敵な企画にしていきましょう!
< おしまい >
こんにちは~