佳洋さんの仕事場を覗かせていただきました。
今は「型物」を成形されている最中です。
平たく丸く整えられた土を、
型に当てながら曲線を作っていきます。
お仕事の手を止めてしまいますが、
いくつかお話をうかがいました。
石膏です。
作る器の種類だけ、
形や大きさのいろいろな型を作るんですよ。
大きな棚の一角(下の方)に
たくさんの型が並んでいました。
型を使うのは簡単そうに見えますけど、
結構めんどうな仕事なんです。
僕の場合は、土を押し込んだ手跡をなるべく消したい。
でも消そうとするけどなかなか消しきれないものなんです。
それもひとつの個性になるんですが。
型物は師匠についているときに初めて任された仕事です。
石膏で作る型が肝要で、
それを使って器の形を作ることは弟子にもできることですからね。
もちろんそれを任されるようになるまでには
かなりの時間がかかりましたけど。
つまりここにある型は
すべて佳洋さんが作られたオリジナルなんですね。
先ほどの釉薬といい、
この型といい、
器を作るためにはそれ以外にもいろいろな
材料や道具を作られるんですね。
そうです。
別にこれでなくてはいけないというわけではないし、
売ってるものもあります。
だけどやっぱりこれと思う器を作るために使う道具だから、
使って気持ちの良いものを使いたいですよね。
僕は手で持って冷たくないものが好きなんです。
他にもいろんなものを作りますよ。
こういう小さな道具もそうですか?
そうです。
小さな道具から蹴ろくろまで、
道具はすべて手作りが基本です。
この物差しなんかもそう。
器を作るときに大きさを測るものですけどね、
成形した土を窯焼きすると15%小さくなるから、
物差しはそれを踏まえて大きく作ってあります。
ほんとだ。
定規とは目盛りが合いませんね。
こういった使う道具や材料もそうですし、
作り方とか工程の進め方とか、
もちろん作家の好みや考えは、
できてくる器のひとつひとつに
全部表れてくるんです。
僕自身が作るものだけでも、
北海道にいたときと木之本に来てからでは違ってくるはずだし、
逆に言えばそうしたいと思っています。
木之本に来たことがどこかに表れているといいなと思います。
たとえばさっきの薪ストーブの灰から作る釉薬ですけど、
燃やす木の種類によって
焼き上がりの表情には違いが出るんですか?
そうそう、出るんですよ。
だからできるだけ地元の木を使いたいと思ってやってます。
へえぇ、おもしろいなぁ。
木之本の木が燃えた後に、
七尾さんの陶芸を通じて木之本っぽさを表現する・・・
おもしろいけど想像しにくいです(笑)
そうでしょうね(笑)
ただ器作りって、
そういう小さなことのひとつひとつの積み重ねですからね、
使う灰の違いって言ったら、
一見些細なことのようなんですけど、
理論的に明らかに違う結果に行き着くんです。
佳洋さんはすごく理論派ですよね?
理系ですからね(笑)
仕事場の壁にも、
工程とか配合とかのデータらしきものの記録された紙が
たくさん貼り付けられてるのを見ました。
笑
あれは僕の長年にわたる重要な企業秘密ですよ。
撮影禁止ですね。
ただ全てをそうやって緻密に組み立てるわけではないです。
成分的に必ずしもよくない材料も使いますし、
相性のよくないもの同士を組み合わせることもあるし、
そういうことを含めて
たとえばこうやったらどうなるかなっていうことを
いろいろ想像しながら作ってるんです。
佳洋さんの「型物」。
これは「練り込み」という技法で作られています。
成形する前に、
性質の異なる数種の土を練りこむことで、
トーンの違う土の重なりそのものが
器全体の模様となって表れてくるそうです。
ありがとうございます。
器は好きなんですが、
こうして作り手の方からお話を聞かせていただくのは初めてです。
まだもっと聞きたいことがあります 笑
ぐっと興味が湧いてきてしまいました。
それはよかったです。
ぜひまた、窯出しのときなんかにも見に来てください。
今回はここまで。
次回、うた子さんの仕事場へ続きます。
型は何でできているんですか?