400年余続く長浜曳山祭。曳山は全部で13基あり、そのうち12基(鳳凰山、高砂山、猩々丸、壽山、翁山、常磐山、萬歳楼、孔雀山、青海山、月宮殿、諫皷山、春日山)が毎年4基ずつ交代で巡行します。ちなみに今年のは、翁山、孔雀山、常磐山、萬歳楼の4基が出番山でした。
長浜の曳山には、舞台が設置されており、その上で街の子どもたちが歌舞伎を演じる姿が何よりの見どころ。毎年本日(ほんび)にあたる4月15日にはたくさんの見物客でいっぱいになります。
わたしは、曳山祭を見に行くようになって今年で3回目になります。初めて祭を見た年は、ちょうどユネスコ無形民族文化財に登録されてから初めて行われる曳山祭だったため、御旅所にはすべての曳山が勢揃いした年でした。夜の御旅所に豪華絢爛な12基の曳山が出揃った光景は、なんとも神々しいというか・・・。本当に煌びやか。しかもこのお祭りが400年も続いているということ。長浜のまちで暮らす方々がいかにこの祭を大切にしてきたかが想像されます。
しかし、曳山祭のみどころは本日だけにあらず!わずか3年ではありますが、長期に渡り行われる曳山祭は本日に以外にもたくさんの見があることを知り、ますます関心を持つようになりました。今回は、そんな長い歴史を持つ曳山祭をより感動できる楽しみ方をご紹介します。
安土桃山時代、長浜城主であった豊臣秀吉に男子が生まれました。喜んだ秀吉は、城下の人びとに砂金を振る舞い、町民がこれをもとに曳山をつくり長濱八幡宮の祭礼に曳き回したのが始まりといわれています。江戸時代曳山を所蔵する各山組は競って曳山を改造し、豪華な装飾品を用いるなど贅をつくしました。現存する曳山はその頃につくられました。最大の呼び物は、5~12際の男の子によって豪華絢爛な曳山の舞台で演じられる子ども歌舞伎。大人顔負けの熱演は、見物客の拍手喝采を浴びます。
4月6日 曳山交代式(曳山博物感)
4月9日 線香番
4月9日~12日 ☆裸参り
4月10日~12日 ☆公開稽古
4月12日 神輿渡御
4月13日 起し太鼓
御幣迎え
籤取り式
十三日番(子ども歌舞伎)
4月14日 自町狂言(子ども歌舞伎)
登り山
☆夕渡り
4月15日 起し太鼓
春季大祭
朝渡り
太刀渡り
翁招き
☆奉納狂言(子ども歌舞伎)
神輿還御
戻り山
4月16日☆後宴狂言(子ども歌舞伎 千秋楽)
観劇会(長浜文化芸術会館※有料)
4月17日 御幣返し
曳山祭は、毎年パンフレットに祭のスケジュールを掲載するほど長期間行われるお祭り。
パンフレットのなかには、今年出番の曳山4基の演目や役者の紹介、何時頃にどこで歌舞伎が上演されるかが載っているので、毎年このパンフレットで予習をします。
各行事がどんなことをされているかは、ここでは省略させてもらいますが、曳山祭をより詳しく知りたい方は、曳山博物館へ足を運んでみて下さいネ◎
長濱八幡宮や御旅所で行われる子ども歌舞伎はもはや最大の見どころではありますが、より祭り役者や大人たちがこの祭りに力を注いでいるか本日以外にも町衆のエネルギーを感じる曳山祭の面白さや見どころがたくさんあります。背景をより少し深く知りたい方や15日の本日(ほんび)に見に行くことができない・・・という方にも楽しんでもらえる見どころを紹介します。 スケジュールの☆印が個人的に特にオススメな見どころです。
■裸参り(4月9日~12日)
午後8時頃から、出番山の若衆が町内から長濱八幡宮と豊国神社へ参詣。さらしを巻いた若衆が2~3名で肩を組み、両端は提灯を高く掲げ「ヨイサーヨイサー」という掛け声をだし続けながら役者の健康とよい奉納狂言の籤(くじ)が引けるよう祈ります。これを4日間毎晩続けられます。
長濱八幡宮にある井戸に代表数名が入って体を清める最中、若衆がその周りを水を浴びながらぐるぐると回る。その姿は、まだ寒い春の夜にただただ圧倒的な力強さを感じます。
初めてみた時は、この寒いなか、さらし1枚でしかも井戸に入って水をかぶるなんて信じられない!と驚愕しました。子ども歌舞伎とはまた違う若衆のたくましくカッコイイ姿が拝見できる裸参りは必見です。さらに山組によって裸参りの格好や提灯の柄が違うところもそれぞれのカラーがあって毎年楽しみなポイントでもあります。
■公開稽古(4月10日~12日)
子ども歌舞伎を演じる役者たちは、みんな街の5歳~12歳の男の子達。普段から俳優訓練などは受けていない、ごくふつうの男の子達です。春休みに入った頃から4月12日までの短い期間、朝・昼・晩と毎日厳しい稽古が繰り返されます。無邪気な彼らが、だんだん彼らが役者として成長していく稽古姿を各町家で見学することができます。
先生に教わる姿は真剣そのもの。難しい言い回しや振り付けも一生懸命練習している姿を見れば、本番の子ども狂言の感動もひとしおです。練習中の真剣な姿と休憩中の無邪気な姿のギャップはたまらなく可愛く、公開稽古を見て本番の歌舞伎をみれば、すっかりファンになってしまいます。
■夕渡り(4月14日)
午後7時頃、長濱街万宮から一八屋の辻まで舞台を終えた子ども役者が若衆に付き添われて街を練り歩きます。
午前中じっくりと歌舞伎を楽しみ、昼間は登り山で曳山が動く臨場感を味わい、夜は役者が街を歩く姿を間近で見ることができる。本日(ほんび)ももちろん素敵なのですが、私個人としてのオススメはこの14日の行事。1日いろんなかたちで曳山祭りを堪能することができます。
特に夜行われる夕渡りは、歌舞伎を終えた役者たちが衣装のまま街を練り歩きます。役者の側に付きそう若衆もこの日は紋付き袴姿で、とても厳かな雰囲気。さらに出番山でない他の山組の方々が、『迎えしゃぎり』と呼ばれるしゃぎりを吹きながら役者を出迎えるシーンも見ることができ、明日の本日に向けてお祭りモードがさらに高まっていくのです。
■奉納狂言(4月15日)
長濱八幡宮境内にて、4つの山組が籤の順番にそって子ども歌舞伎を神様に奉納します。
この日は、街が一番賑わいを見せる日。見物客もたくさん訪れ、役者はボルテージが最大に!八幡宮で奉納後は、御旅所へ向かう参道でも上演していくのですが、狂言執行場所が山によって時間も場所ちがうので、みたい演目時間と場所はパンフレットでチェックされることをオススメします。(計4回上演される)4基すべて歌舞伎の演目が違うのでどれを見ようか考えるのも楽しみのひとつですね。普段は普通の男の子達なのに演技力は大人顔負けの迫力!
■後宴狂言(4月16日)
子ども歌舞伎の千秋楽にあたる日。各町内で曳山をひきだし、午前9時頃から千秋楽まで数回にわたり、子ども歌舞伎を披露します。この日は長浜文化芸術会館のステージでも披露します。(有料)厳しい稽古を重ね、何日もの舞台で役を演じてきた子どもたちは、すっかり役を我がものとして、磨きに磨いた演技をみせてくれます。
最後曳山の山蔵の前で行われる千秋楽は、下で見守るご家族の方々もさることながら、祭りを支えてきた山組の中老、若衆、また最後の有志を見るべくして集まった観客で最後まで賑わいます。『待ってました!』、『成田屋!』などの掛け声で一層舞台が盛り上がり、今年の幕を締められます。
子どもから、大人まで力を合わせてつくりあげていく曳山祭。この華やかな祭を400年余続けてきたということは、決して並大抵なことではないと思います。子どもたちが本番に向けてしっかりと演技ができるように若衆が親代わりとして寄り添い、4日間続く裸参りを女性陣がまかないで労いう。いろんな行事を拝見することで、表にでることはない裏舞台で、祭という伝統を支えている姿を見ることが出来ました。大変な祭だけど、千秋楽が終わると「寂しいな・・・」と感じる方も多いと聞きます。曳山祭がいかに街の人々に大切に愛されてきたのかを感じます。
わたしは、長浜育ちではなかったこともあり、この仕事を始めてから曳山祭の存在を知りました。最初は「観光客向けのお祭りなのかな・・・」と思うほど、外から来る観光客の多さに驚きました。そもそも滋賀県にこんなに壮大な祭りがあったことにまずびっくりで。曳山祭を見るようになってまだ数年ですが、子ども達の有志を見る度に胸を打たれ、若衆の裸参りに毎年ドキドキしながら、今年はどんな祭になるだろうと楽しむようになりました。まだ見ていない山組もあるので、来年が楽しみです!
曳山祭の舞台裏を知れば知るほど、表舞台の魅力が増していきます。いまを生きる人々が支え、続けているからこそ伝統になっていく。毎年そうして歴史を刻んできたから、400年経った今でも見ることができる。この地域の繋がりのすごさを感じずにはいられません。
今年歌舞伎を演じた子ども達もいずれ大人になり、今度は若衆として支えていく。働き方や暮らし方が昔とは変わっていく中で、こうした伝統を守っていくことは大変なことだと思います。ですが、この世界に誇れる曳山祭の素晴らしい光景がこの先も続いていくことを願わずにはいれません。
曳山祭のスケジュールは毎年この日程で行われます。今年見ることが出来なかった方はぜひ来年みにきてくださいね。
ー Thanks! ー
・川瀬 智久さん
・川地 米亜さん
・竹中 昌代さん
・田中 香織さん
・山内 美和子さん
長浜ローカルフォトメンバーの皆様、写真のご協力ありがとうございました!
写真を通して街を元気にする!をモットーに長浜の素敵な「ひと」や「まち」を日々更新中◎
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(文・ミカミ)