生活者の消費行動の目的が“所有する”ことから“体験する”へ転換していくなかで、心の豊かさを大切にしている方が増えている。従来のサービスのあり方が時代の流れによって変わりつつあります。
人口減少で増え続ける空き家や事業継承がなされないまま静かに店の暖簾をおろしていく老舗を目の前にして、わたしたちはこれからどんな時間を過ごし、どんな時代をつくっていけば良いのでしょうか。
1月18日(土)、長浜旧市街地にある書店「文泉堂」にて「クリエイターズアクション」を開催しました。 クリエイターズアクションとは、未来の長浜像を創造しようとする多種多様な地元プレイヤーたちが交流しながら、地域をアップデートするためのヒントを探し、行動を起こそうというプロジェクト。
今回は「まちのDNAを継承しながら未来のマーケットを開発する」をテーマにトークセッションとゲストを交えてのディスカッションの2部構成で行ないました。
ゲストには、いま国内外からものづくりの街として注目されている東京都台東区のカチクラエリアで“たのしく、書く人。”をコンセプトに掲げた文具店「カキモリ」を経営する広瀬琢磨さんをお迎え。従来の文具の視点を越えて、町工場のひとや技術と連携したコンテンツを開発する先輩として、ファンや関係者に喜ばれるお店づくりの実例を伺いました。
1980年 群馬県高崎市生まれ。大学卒業後、外資系の医療メーカーを経て、2006年家業の文具店が同業の株式会社ほたかを子会社化したことをきっかけに入社。その後、代表取締役に就任。2010年『たのしく、書く人』をコンセプトに掲げた文具店『カキモリ』を蔵前にオープン。
良質なデザインで実用的な文具が揃い、そのなかでも、好きな表紙や中紙をじぶんで選び、その場で仕上げてくれる『オーダーノート』が好評を得ている。下町に息づく職人の存在を後世に残すこともカキモリの大切な仕事と考え、『職人と消費者の繋ぎ役』として職人のこだわりやものづくりの価値をお客様に届けている。丁寧なものづくりを好む多くのファンがその思いに共感し、国内外から蔵前のお店に足を運ぶひとが後を絶たない。2017年の移転リニューアルを経て、現在に至る。
◆カキモリ HP https://kakimori.com/
◆ink stand by kakimori HP https://inkstand.jp/
イベントには、地元の商店主やクリエイター、遠方からだと京都から…と市内外の方々30名ほどが参加。広瀬さんから、下町に息づく職人の存在を後世に残すための、地域の職人と消費者をつなぐ取り組み、デジタルとアナログのバランスを考えた発信の方法など、ストーリーや世界観を大切にしたお店づくりが紹介されました。
また華々しく活躍されて見える反面、立上げ当初の失敗事例や店の現状、若い社員とのコミュニケーションで試行錯誤されていること、世界観を共有するための努力など、気になる社内事情もお話くださり、登壇者と参加者の距離感が近づき、アットホームなイベントになりました。
イベントに参加された方からは、
・いわゆる公共施設でのトークセッションとは違い、場所の雰囲気や内容が身近に感じられ、参考になることが多かった。
・ストーリー設計や世界観を大切にしながらも、経営視点では潔いよいところや、現状に奢ることなく時代と共に柔軟に変化されている姿がすごいと思った。
・外部からゲストを呼び、同じ場所で同じお話を共有しながら、地域のひとが集まり交流が持てることが良かった。こういった企画を商店街のいろんなところで出来たら良いと思う。
イベント終了後の懇親会では、さらに広瀬さんとじっくりお話をしたり、各所で交流を楽しまれたりしている光景が印象的でした。
こういった街なかを舞台にした学びの場を今後定期的につくって、街なかの方々とお話を通して課題を共有したり地域の未来像を想像したりしながら新たなイノベーションがうまれるきっかけづくりができたらなと思います。
お集まりくださった参加者の皆さん、お忙しいなか長浜へお越しくださった広瀬さん、イベント開催にあたりご協力いただいた舟を漕げメンバーや市役所の皆さまに心から感謝申し上げます!
また、クリエイターズアクション前には、どんどんにて広瀬さんによるインクづくりのワークショップを開催していただきました。参加者は色とりどりのインクを組み合わせてオリジナルインクを製作。世界にひとつだけの色を生み出す楽しさから、このペンを使おうか、だれに手紙を送ろうか…勝手に想像が膨らんで、すっかりカキモリワールドにハマってしまいました。 つくったインクが届くのが待ち遠しいですね!
朝早くから広瀬さんに長浜にお越しいただいて、時間の許す限りどんどん周辺で活動するクリエイターやショップをご案内しました。
●Atelier Nagahama
●MAFIS_design.
●L’HERBE ROYAL TEA HOUSE
●MATCH Leather Works
写真:長浜市・長浜まちづくり株式会社