湖北の暮らし案内所 どんどん

2016.10.11
暮らし案内

七尾うた子さんの仕事場

七尾うた子さん

続いてうた子さんの仕事場にお邪魔しました。

脚で力強くろくろを蹴りながら、
「モロッコカップ」を作られているところだそうです。

大きな土のかたまり

台の上に乗っているのは大きな土のかたまり。
それが小柄なうた子さんの、
力強いひと蹴りでグルグルグルっと回転して、
両掌の中に包み込まれるうちに、
少しずつ、少しずつ、

くびれのある独特のフォルム

くびれのある独特のフォルムが出来上がってきます。

七尾うた子さんの作業風景

粗野で硬い土

よしっ。

成形されたカップを、
糸を使って、
土のかたまりから切り離すと、
再びろくろを蹴って、
同じ作業が始まりました。

と、そこへ佳洋さんがやってきました。

七尾さんの作業場
七尾佳洋さん

こうしてみると違和感がないんだけど、
実は、
私はちょっと真似したくないような、
大変な仕事をしてるんですよ。

竹村 光雄

カップの形が出来ていくのを見て
すごいなぁと感心してましたけど、
ほかに何か特別なことをしているんですか?

七尾佳洋さん

彼女が好んで使っているのは
煉瓦用のすごく硬い土なんです。
硬いだけじゃなくて不純物が多くて、
なかなか思い通りの形にはならないんですよ。

竹村 光雄

じゃあこうして同じような姿のカップを
いくつも作るっていうのは・・・

七尾佳洋さん

すごく大変!
それにあの真ん中のところにでっぱりがあるでしょ?
あれはねぇ・・・
考えただけでめんどう、
ほんとによくやるなぁっていう感じですよ。

七尾うた子さん

煉瓦用の土は硬い粗野な土ですよね。
私はそういうものが好きでして。

ろくろを蹴り続けるうた子

と言いながらろくろを蹴り続けるうた子さん。

七尾うた子さん

私は姿・形がきれいに整ったものよりも、
硬くゴワゴワしていたり、
錆びついてザラザラになっていり、
時間が経って崩れてきたものとか、
そんな中からも力強いエネルギーが伝わってきたりとか、
そういうものが好きなんです。

作り手としても、
スマートなものよりひとくせあるもの。
私の中の、
良いところだけじゃなくて奥の方のどろどろした部分とか、
内面にあるいろんな感情を通して生み出していく形を
大切にしたいと考えているんです。

錆びついた農具

うた子さんが作業場にしている土蔵の入り口には
錆びついた農具が掛けられていた。

竹村 光雄

適切な言葉が見当たらないんですが、
とても共感しました。
ありふれたものとは違くて、
かといって奇抜ではなく、
自然な佇まいの中に強い芯があるというか、 パワーがあるというか、
そういうのは意図してできるものではないとも感じました。

七尾うた子さん

そうですね。
私は予定調和が大嫌いで、
そのとき考えて手や身体が動いたことが
形を生み出すっていうことが大事だと考えています。
・・・
いろんなことを考えながら、
手間を重ねながらか、
器を作っていくんですけど。
できてきたものを大事に大事に仕上げるというよりも、
ここまで来たら、
じゃあ次はこれをやってみるとどうなるだろう?
ということを思い切ってやってしまうタイプだと思うんです。
それは決して思いつきでいい加減なことをしてしまう
ということではなくて・・・
そうすることで
もっと納得のいくものに近ずけるんじゃないかっていう、
そういう作り方をしています。

竹村 光雄

やっぱりどう表現したら良いのかわからないですけど、
すごくいいなぁと感じます。
作り手であるうた子さんが
思いっきり土とぶつかり合いながら
形を生み出していくときの気持ちをもっと知りたい、
ですね。

中学生の頃、おこずかいを貯めて買った本

竹村 光雄

陶芸に対して興味を持たれたのは何時頃なんですか?

七尾うた子さん

小さい頃から母と地元の陶器屋さんに行って
器を選ぶのが好きだったんですよ。

七尾うた子さん
七尾うた子さん

高槻の2つ隣の水無瀬という駅の近くだったんですけど
地元に2軒、陶器屋さんがありまして、
具体的にどんなものが好きだったかというとこまでは
ちょっと記憶に無いんですが、
ほんとに子供の頃のはなしですね。

竹村 光雄

そんなに小さな頃からですか。

七尾うた子さん

それから、
私の原点のように今まですーっと大切にしてきた本があるんです。

ペルシアのやきもの
竹村 光雄

すごく年季が入っていますね!

七尾うた子さん

中学生の頃にどうしても欲しくて、
おこずかいを貯めて買ったものです。

竹村 光雄

おこずかいを貯めて焼きものの本!

七尾うた子さん

そういう子だったんですよね。
本屋さんで見て、
ここに載ってる焼きものに本当に見入ってしまって、
何となくですが、
そのときに感じた気持ちはいまだにずっと
変わってないと思います。

竹村 光雄

流行云々とはまったく違う世界ですね。

七尾うた子さん

そうなんです。
ここに載っている器を作られた
ペルシャ人の気持ちまではわからないですけど、
私はずっとこれをお手本にしてるんです。

竹村 光雄

長い間ずーっと、
まわりに左右されずに我が道をいくって、
簡単なことじゃないですよね。

七尾うた子さん

そうです。
シンプルにそれができたらいいんですけど、
気を抜くとすぐに流されてしまいそうになります。
わたしは自分は特に流されやすい質だと思うのと、
同時にそれがいやで、
だから他の方の作品は見たくないとさえ思います。
すごく気になるんですけどね、
見たら多かれ少なかれ影響されてしまうと思う。

竹村 光雄

ストイック!

七尾うた子さん

本当ですよ、見るのは古典だけ 笑

音楽も本も料理も好き
七尾うた子さん

ただでもですね、
私は器のことだけを考えていたいわけではないです。
音楽も本も料理も好きだし、
そういうところではすごく興味の幅が広くて、
いろんな人からいろんな情報を頂いたり、
聞いたことを試しにやってみたりっていうのは大好き。

竹村 光雄

器はそういう暮らしの一部にあるんですね。

暮らしの中で身の回りにある
「人の営み」が好きとおしゃるうた子さんの、
強い意志としなやかさが共存しているような器。

モロッコカップとくびれのあるカップ

取材当日に作られていたモロッコカップ(右)と、
その逆でくびれのあるカップ。
どちらも手の指の掛かりが良くて持ちやすく、
さりげなく独特の存在感があります。

今回はここまで。
続いて最後になりますが、
湖北の暮らし案内所どんどんにて開催される展示会について
お知らせします。


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