山に降った雨や雪が
土に浸み、湧き出し
びわ湖へと注ぐ つかの間
みずみずしい湖北の暮らしを彩る
愛しい風景をモチーフにした
てぬぐいです
もくじ
まちなかのマンションの一室。
リビングの大きな窓からは琵琶湖とのどかな田園風景が見渡せて、ときおり電車が横切っていく。
子どもたちが学校へ行っている間、寝静まってから…
この部屋はいとうまきさんの仕事場になります。
いとうさんの名を消しゴムはんこ作家として知る人も多いはず。
イラストもはんこも、ポップでかわいいタッチのキャラクターが特徴で、 子どもの頃から絵を描くのも、切ったり彫ったりも大好き。
イラストの仕事への思いを募らせつつ、広告会社等で グラフィックデザインに携わるなか、ひょんなことから 大手の旅行雑誌から国内各地のイラストマップの依頼が。
これをきっかけに注文が舞い込むようになりました。
「建物の瓦の一枚一枚の色を変えていくような細かい作業が苦にならない」と話すように、新聞や雑誌に掲載されたイラストをまとめたワークブックには、かわいさとち密さが凝縮された地図や風景がずらり。
「そうそう、このマップって実は行ったことのない地域で。
地図帳と照らし合わせながら必死で作りましたね。
デザインの業務につきながらもイラストが描きたいと思い続けてきたので、
とにかく描けることがうれしくて楽しくて」とブックを手に振り返ります。
「湖北の風景、人、もの、ことを織り込んだ地図のような」
そんないとうさんへの湖北てぬぐいへのリクエストがこれ。
まずは店長タケムラと副店長ミカミと共に登場させるモチーフを検討。
鮒ずしに、田植えの風景、鯖そうめんに地酒、里山でのサ イクリング……。
ピックアップしたモチーフは、ひとつひとつを個別に紙に描き、スキャン、データ化したうえで、絵柄を整え全体の配置をデザインするという流れで仕上がっていきました。
完成したイラストに登場するモチーフの総数は74個!
まちなかの家屋の感じも入れたいね、ここにも人がほしいね といった具合にタケムラリクエストはとどまらず、当初の案からずっと盛りだくさんになったのだと苦笑しながらも
「イラストもはんこも、作家というよりは職人という意識で やっていることが多いですね。どんなリクエストにも応えますよという具合に」
と自らの仕事ぶりを分析します。
たくさんのモチーフがぎっしりと詰め込まれているのに、 すっきりとした印象を与えるのは、いとうさんのタッチならでは。
「線画というか、描く対象物を線で表現する画風だと思っています。 線の強弱でモチーフの特徴をとらえたい。 イラストではあまりわからないかもしれないけど、 はんこ作品は版を見ていただくとわかるのではないかな」
色を多用しないことで、際立つ線。湖北てぬぐいを単色にしたのは、 いとうさんの「らしさ」をいちばんふさわしいかたちで伝えたい との思いもあってのことでした。
「たとえば、田んぼならみたて農園、地酒なら冨田酒造・・・
というように、モチーフにまつわる人々が身近にいて、
具体的に顔を思い浮かべることができる。
そんなみんなのことを考えながら描けて、今回の制作は楽しかったですね」
こんなふうにして仕上がった湖北のマップてぬぐい。
さらに一部のモチーフを抜粋してチェッカーフラッグテイストにした 2種類の湖北てぬぐいのデザインが完成しました。
いよいよ次は生地への染色へ!!
湖北手ぬぐいができるまで
その2 注染工場見学編へつづく・・
・ライター/矢島絢子
・カメラマン/矢野祥太(SOF.)
・編集/ミカミユキ(どんどんスタッフ)